「わが町の名物を全国区に」「B級グルメで町おこしを」――。
東京の繁華街で地方のアンテナショップが多数出店、ご当地グルメや名物のイベントなどを起爆剤に観光客を誘導しようと、全国の自治体が知恵を絞っているのは多くの読者がご存じだろう。ただ、多くの情報がはんらんする東京で、すべての試みが順調に運んでいるとは言い難い状況にある。こうした環境下、自発的に発生したご当地イベントが静かに注目を集め始めている。今回の時事日想は、東京在住の若き秋田県人が主催するイベントに触れてみる。
【動画:第5回秋田魂心会のPV】 【拡大画像や他の画像】
●開かれた県人会
「店長、そのTシャツカッコイイね。ところで『NDA』ってどういう意味?」
「これはNDAではなく、『んだ』のこと。秋田弁で『そうだ』って意味です」
これは筆者が頻繁に出没する新宿のバーでの一コマだ。
黒地のTシャツに白く染め抜かれたNDAの文字。当初、軍隊の特殊部隊の頭文字かなにかだと筆者は予想していたのだが、意外な答えが返ってきた。
この会話が、首都圏に住む秋田出身の若者たちが主催する「秋田魂心会(こんしんかい)」を知るきっかけとなった。懇親会ではなく、魂心会だ。故郷を遠く離れた東京で、同県出身者が旧交を温める目的で始まったが、最近はこれが秋田をアピールする有力イベントに育っているのだ。
筆者は新潟県出身。出身高校の東京地区同窓会の案内をもらい、在京の新潟県人会への出席を促される機会があるのだが、多忙を理由に1回も顔を出したことがない不義理者だ。本音を言えば、この手の会合には苦手な先輩がいたり、県や市のお役人のお堅い話に付き合わされることを敬遠しているから。
こんな筆者がなぜ「秋田魂心会」に関心を持ったかといえば、イベントが自発的に発生し、お堅い県の役人や地元経済界のヒモ付きでないところだったのだ。
また県人会といえば、東京近郊の地元出身者のみが集う閉鎖的なイメージがつきまとう。だが、同会に関しては、他県出身者の参加も強く求めている。
「東京在住の県人が交流を深めると同時に、県外の方々にも秋田の酒や食べ物など、地元の魅力を広くアピールしたい」(先の店長)という主旨に興味を抱いた。
筆者は拙著『みちのく麺食い記者?宮沢賢一郎シリーズ』の取材?執筆に当たり、東北各地を飛び回っている。このため、秋田をはじめ東北6県には強い思い入れがあることをあらかじめお断わりしておく。ただ、そうした要因を割り引いても、このイベントは単純に面白い。
イベントは2008年に始まり、8月7日の会合で5回目となる。参加者も増加し、400人程度を見込んでいるという。毎回、イベントには同県出身の著名な俳優やタレントがメッセージを寄せたほか、モデルやお笑い芸人も参加しているそうだ。
ホテルの宴会場などで開かれる型通りの県人会ではなく、DJが音をつくり、秋田美人によるファッションショーも敢行されるなど、型破りなイベントになるという。
●自発的発生で集客増、アピール度向上へ
今回、同会の活動に触れたのは、もう1つ別の理由がある。『麺食い記者シリーズ』の取材で東北各地を飛び回る間、各地の自治体が例外なく地元への集客、そして県外への広報活動を積極化させていることを知った。
だが、「都心のアンテナショップは高家賃と低収益に泣き、イベントを企画すれば業者に割高な経費を請求され、苦労の連続」(某県幹部)との声を頻繁に聞いたのだ。
一方、秋田の若者が主催する同会は、会費制であり、主催者たちは手弁当で会を運営している。つまり、県や市など地方自治体が税金を使って広報活動をしているのではなく、若者たちが自発的に地元の魅力をアピールしている。公金ゼロでメディアへの露出も増え始めているのだ。
筆者は同会の運営モデルを、東京でアンテナショップを展開する地方自治体すべてに当てはめよと勧めているのではない。お堅い役人がこのようなイベントを真似ても、集客は見込めないだろうし、充分な広報効果を発揮できないと予想するからだ。
ただ、物は考えようだということをお伝えしたかったのだ。筆者も地元?新潟への重入れはある。郷土意識も強いと自負している。秋田魂心会の新潟版があれば、積極的に関わってみたい、純粋にそう思う。
ちなみに、筆者は9月のイベントには残念ながら参加できない。取材で秋田に行っているからである。【相場英雄,Business Media 誠】
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引用元:セキヘキ(Sekiheki) 情報局
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